Dr. Kenの “ゼロより1” 日記

沖縄県那覇市久茂地 タイムスビル6階にある 形成外科KCの院長、Dr. Kenのブログです。

『形成外科手術の十戒』解説4

 78歳、女性、左下眼瞼脂腺癌
 眼瞼脂腺癌は、悪性度の高い腫瘍のため、外科的に治療すると切除後に下眼瞼全体の欠損を生じます。上下眼瞼は、表側から皮膚、眼輪筋、瞼板(軟骨)さらに結膜という層構造になっています。眼瞼は、目の開け閉め、眼球保護の面からとても大切な部分ですので、眼瞼のすべての層が欠損した場合に、もとの層構造を再建することは、とても重要です。この方には、結膜側を支持性のある硬口蓋粘膜(口の中の天井部分にある比較的硬い粘膜)で、皮膚側を頬部回転皮弁(こめかみから耳の前、さらには首の部分に及ぶ切開を加え、皮膚を少しずつずらして移動させる方法)で再建して良い結果が得られました。

線で切り取る範囲を示しています。
『形成外科手術の十戒』解説4

結膜側を硬口蓋粘膜で再建しているところです。
『形成外科手術の十戒』解説4

再建後、1年再発もなく、目の開け閉めも問題ありません。
『形成外科手術の十戒』解説4


この症例から学んだ十戒は以下の点です。

十戒その6:欠損は似た組織でおぎなえ、余裕をもって組織を確保する

けがやできものを切除したあとの欠損部分は、できるだけ似た組織でおぎなうとよい結果が得られます。多くの場合、再建材料は隣接した部分の組織になりますが、局所皮弁が優れているのはそのためです。しかし、必ずしも隣りにこだわる必要はありません。性状の似た組織を全身くまなく探し求め、微小血管外科(microsurgery)を応用することで、どの部位の組織でも、多部位へ移植することが可能となりました。


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