医療法人こころ満足会 形成外科KC

2011年11月07日

◆CTアンギオ

の結果に基づいて手術前に正確に皮弁をデザインすることが可能になりました(詳しくはこちら)。

乳がんに対する乳房温存手術後の部分的乳房再建は、全再建よりもむしろ手技的には難易度が高くなります。

特に自家組織(自分の身体の一部分)を用いる場合には、血管の解剖を熟知する必要があります。
最近は穿通枝皮弁(詳しくはこちら)による再建が発展し、あらゆる再建に応用されています。

そのため、細い穿通血管がどこの、どのように存在するのかを、術前に評価することがとても重要です。

その手段が、CTアンギオや超音波検査です。

手術中にCTアンギオの画像で穿通枝を確認しているところ。


CTアンギオ画像の一例

説明は割愛しますが、筋肉や骨と穿通血管との位置関係が評価できます。



  

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2011年09月12日

◆今日も乳房再建

がありました。

昨年からほぼ毎月1例のペースで県立医療センターで同院形成外科の仲間と一緒に再建手術を行っています(こちらも参照)。

回を重ねる毎に形成外科医と看護師、さらには麻酔科医との連携もよくなり長時間手術でも手際よく終えるようになりました。チョキ

再建方法はいろいろですが、コンスタントに難手術をこなすことで研修医の技術の向上も目を見張るものがあります。

手術前に教科書を読んで知識をインプットすることは大事ですが、細かな手技的ノウハウは、先輩の動きを実際に見て、指導を受けながら手を動かして初めて身についてきます。ガッツポーズ

一人前の外科医が誕生するには時間がかかります。よく徒弟制度にたとえられますが、私自身、一般外科研修から数えると26年を経た今でも多くの師を仰ぎつつ、たまには師と仰がれながら「徒弟制度」の中で生きているとつくづく思います。パンチ!

術中の様子


N先生ほか皆さん、いつも協力ありがとうございます。
  

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2011年09月01日

◆外傷性刺青

とは、交通事故や転倒などで体表面にできた擦り傷が治ったあとに、表面が青黒色となった状態を言います。

受傷時にアスファルトの粉や砂粒が皮膚の中に残ったまま、擦り傷が治ったために生じます。

ですからキズが深くなくても、異物が擦り傷の中に残っていそうなときは最初の治療で丁寧に除く必要があります。

次の写真は顔面をアスファルト道路に擦ってケガしたあと、キズはなおったものの淡青色の外傷性刺青が残ったため来院されました方です。

外傷性刺青にはQスイッチレーザーが有効です。

一回の照射後7ヶ月の状態、外傷性刺青はほとんど消失しています。
  

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2011年08月26日

◆コンタクトレンズ

使ってますか。

と尋ねるとおよそ8割の方が「はい」と答えます。

何に対する問いかと言うと、眼瞼下垂(まぶたの垂れ下がり)を疑わせる20歳代から40歳代の方への質問です。

具体的には、次のような見た目の変化のある方に対する質問です。
1.まぶたが下がっている(目の開きが狭い)
2.二重の幅が広い、乱れている、あるいは三重、四重になっている
3.目の上が窪んでいる
4.眉毛が上に挙がり額にシワを寄せている

最近は、受診の理由がホクロやしこりであっても、眼瞼下垂を疑う場合は、本来の問題点が解決した後にタイミングをみてコンタクトレンズのことやまぶたの見た目の変化がないか尋ねるようにしています。以前は、失礼な質問になるかも知れないと思い控えていました。

過去4年余りの間に当院で250名の眼瞼下垂手術を行い、その結果、視野(見える範囲)の改善、まぶたの開けやすさ、随伴症状(頭痛、肩こりなど)の改善、さらには見た目の若返りなど、術後の生活の質(QOL)の向上を目の当たりにしてきました。

眼瞼下垂はまぶたの病気ですが、徐々に症状が進行しますので、多くの方が治療の対象になるとは考えていないようです。

しかし、術後のQOLの改善を見ていると、情報提供として積極的に声かけするようにしています。

もちろん、眼瞼下垂はコンタクトレンズを使用している方のみに生ずるわけではありません。一般に言われているのは、目をよくこする方やアトピー性皮膚炎やアレルギー性結膜炎などで目を触ることが多い方、さらには加齢に伴う変化としても眼瞼下垂は見られます。

眼瞼下垂については以前のブログもご覧下さい()。  

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2011年08月06日

◆3DCT

(3次元CT)撮影の進歩には目を見張るものがあります。

特に顔面骨の異常を評価する上で欠かせません。
まるで実際の「骨」を手に取るように観察することができます。

次の写真は生まれつき右上顎の一部分(梨状口)が欠けています。

欠けた部分と範囲が正確に分かります。

その欠けた部分に人工骨を補いました(術後6ヶ月)。

人工骨が周囲の骨としっかりつながっているのがよく分かります。
  

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2011年07月02日

◆ケロイド

の治療については以前にも紹介しました(こちら)。

ケロイドの好発部位である前胸部や肩にある場合には、外科的切除はほとんど行いません。高率に再発するからです。

治療の前に、常に次の事をお話しするようにしています。

「ケロイド、特に前胸部や肩にある場合の治療目標は、それを消すことではなく、まず進行を抑えることです。うまくいけば痒みや痛みの症状を和らげ、盛り上がりや赤み、硬さを改善することができます。」


形成外科KCでの具体的な治療は、ステロイド剤の局所注射と抗アレルギー剤(唯一ケロイドの治療で保険適応になっている薬剤)の内服です。前者は、月に1回の注射を繰り返し、後者は、6ヶ月以上継続して内服します。

初回は、硬いケロイドの中に注射しますので、かなりの痛みを伴いますが、回数を重ねる毎に柔らかくなり痛みも軽くなります。私自身、注射時の抵抗が軽減することを通じてケロイドの改善を直に感じます。

前胸部ケロイド治療前


ステロイド剤2回局注後


ステロイド剤5回局注後

肉眼的にも明らかに改善しています。痒みもほとんどありません
  

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2011年06月16日

◆ワキガの手術2

については、以前にも紹介しました(こちら)。その中で手術について詳細に述べています。

手術の目的は、匂いをできるだけ減らすことですが、そのためには匂いの元であるアポクリン腺をできるだけ取り除く必要があります。アポクリン腺を頑張って削り取っていくと問題になるのは、手術後の出血です。

大学病院で手術を教わったころは、手術後の出血を予防するためにワキに綿をあてて弾力包帯でたすき掛けにして強く圧迫していました。腕を降ろすことができないため1週間の入院が必要でした。その間、用を足すこともままならないため、週の後半には患者さんにかなりのストレスが溜まっている様子がありありでした。

開業後に再びワキガの手術をするに当たり考えたのは、大学病院で教わった方法ではなく、いかに患者さんの負担を少なくして出血を予防するか、ということでした。

その結果、考え出したのが特殊なスポンジ(ハイドロサイト)を使った方法です。


この方法を2009年の形成外科学会総会で報告しました。
要旨は、以下のとおりです。
2007年6月から2009年8月までに行ったワキガ手術79例154部位の出血による合併用は2例2部位(1.3%)で、2例とも初期に行った症例であった。利点は、1)大きな綿やガーゼによる圧迫が不要で、2)上肢の可動域制限や日常生活の制限が少なく、3) 皮弁を均等に圧迫することで血腫形成、皮弁壊死が少ないことである。
  

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2011年05月23日

◆乳房再建

については以前にも紹介しました(詳しくはこちら)が、今日も無事、手術を終えホッとしたところでキーを叩いています。

このところ毎月県立医療センターで乳房再建を行っています。ほとんどの方に遊離腹直筋皮弁と呼ぶ、下腹部の皮膚と脂肪で新しい乳房を作っています。人体の詳細な解剖と技術の進歩で、最近は筋肉を全く犠牲にしない穿通枝皮弁(細い血管のみで皮膚を脂肪織を栄養する)で再建することが多くなってきました。

直径2ミリ前後の動静脈で15X45cm近くの大きな組織(皮膚と脂肪)の血液循環を維持できるのです。

下腹部に採取する穿通枝皮弁をデザインしたところ


実際に採取した穿通枝皮弁、牽引して棒のように立っているのが栄養血管(穿通枝)です(あえて白黒にしています)。


私には形成外科医の智慧創意・工夫、そして勇気の結晶のように見えます。  

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2011年04月28日

◆老人性イボ

と俗に呼ばれる病変は顔面や頚部の露出部に多発し、老人性疣贅と呼ばれることもあります。脂漏性角化症または軟線維腫が老人性イボに相当します。

紫外線量が高いせいか、沖縄の方は男女を問わず、老人性イボで悩んでいる方が多いように思います。

頚に数百個単位で病変が見られる方も珍しくありません。

治療は、繊細なハサミで切り取るか、炭酸ガスレーザーで焼灼することで、とてもきれいに治ります。

炭酸ガスレーザー焼灼前


焼灼後1ヶ月

  

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2011年04月17日

◆茶色のあざ

は、比較的多い生まれつきの皮膚病変です。

 表面が平坦で境界がはっきりしているのが特徴で、ほとんどの場合、扁平母斑です。

 レーザーの適応ですが、再発率が高く(80%前後)、治療は意外と困難です。

 ただ、逆にいえば20%はキズ跡を残さず治る可能性があるという事ですので、私はまずレーザーで治療することにしています。

 以前に扁平母斑がある兄弟を治療しました。
同じレーザーで、同じパワーで治療したにもかかわらず、一方は1回の照射で治癒し、一方は2度照射しても再発しました。

治療前

治療後6ヶ月、再発なし


治療前

2回照射後4ヶ月、再発


 再発のメカニズムは、未だよくわかっていません。毛の周囲から再発することが多いため、脱毛レーザーも併用すると良いという意見もありますが、必ずしもよい成績ではないようです。  

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2011年03月04日

◆形成外科の「はしご」

とは、形成外科医のはしご酒ではありません、念のため(笑)。

 形成外科または再建外科の「はしご」とは、体の一部に組織欠損ができた時に、どのような手段で治すかを考えるステップを示す時に使う言葉です。

 例えば、顔面の小さなホクロを切り取った時は、ほとんどの場合、直接、縫い寄せて治療できます。ところが皮膚がんを切り取って、5cmの皮膚欠損ができた時に、キズを直接、縫合閉鎖できないことは容易に想像できます。そんな時に、どの様に治療するかを決めるのに「形成外科のはしご」を思い浮かべます。

これが私が形成外科を始めた頃に教えられた「はしご」です。

4段しかありませんが、実は一段一段に載っかっている答えは必ずしも一つとは限りません。ですから、まず一段目に立ち止まりその段でうまく治せないか考えます。それがダメなら一段上がりまた熟考します。


 基本的には最も簡単、単純で効果的な方法がベストですが、それがかなわない時に次のステップ、やや難しい方法を考えるわけです。 4段目の遠隔皮弁は、文字通り組織欠損部から離れた場所の組織を持ってくる訳ですから、技術的にも難しくなりますので、最後の最後の手段です。

ところで、最新の形成外科雑誌PRS(こちら)で、「形成外科のはしご」改訂版が紹介されていました。

これです。

(注:元々は英語表記で日本語訳は私の独断です。)


合計9段になっていますが、古典的な4段の中に新しい形成外科技術、考えが反映されています。ただ、以前の「はしご」が不要になった訳ではなく、基本的な選択枝は4段のままで、より早く、よりきれいに治すために、新たな「段」を組み合わせたほうが良いという提案と理解しています。  

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2011年02月09日

◆乳房再建とは

、乳がんなどの手術のために失った乳房を元の形に近い状態に再建する手術のことです。形成再建外科医として個人的に最も力を入れている分野であり、ライフワークと言っても良い手術です。

 形成外科医になって20年余にわたり乳房再建に取り組んできましたが、実際に乳がんを治療する乳腺外科医の方はもちろん、一般の方に、そのことが少しずつ浸透してきているのを感じます。

 そのことに関連して本日の日本経済新聞に以下の記事が載っていました。

 
2009年に全国の医療機関で行われた乳がん治療のうち、乳房を残す「乳房温存手術」の割合が6年前の前回調査を6.0ポイント上回る59.2%に達したことが患者団体の調査でわかった。乳房を切除した場合に元の形に戻す「再建手術」の実施率も前回の3倍に上昇しており、患者団体は「医師に乳房を残したいという女性への理解が広がっている」と話している。
 調査は乳がんの患者団体「イデアフォー」(東京)が実施。このうち乳房を残す「乳房温存手術」を受けた人の割合は59.2%で、実施率は前回03年の調査から6.0ポイント上昇した。1993年調査は23%、97年は36%で、回を追うごとに実施率が高まっている。温存手術が増えたため、がん組織とともに乳房を摘出する切除手術の実施率は36.5%と6.1ポイント減。
 切除手術を受けた人のうち、手術と同時か一定期間後に患者の脂肪やシリコンなどで元の形に戻す再建手術を実施した割合は11.3%と前回(3.4%)の約3倍に高まった。
 外見が変わることの精神的ダメージなどから、乳房の温存を望む患者は多い。イデアフォー世話人の中沢幾子さんは「かつてはしこりの大きさが一定以上だと切除手術を実施するケースが多かったが、患者に配慮しできるだけ温存しようという医師が増えた」と話す。


 乳房再建を受けた方の割合が前回調査の3倍に増えたとありますが、それでも11%余りというのはまだまだ少ないと私は思います。というのは県立病院勤務中は乳がんの診断を受け全切除が必要な方の半数が乳房再建を受けたいと思い、実際その半数の方が切除と同時に再建手術を受けていたからです。

 ご興味のある方は、私が2005年に琉球新報のコラム「うちなー健康歳時記」に書いた乳房再建に関する記事もこちらからご覧下さい。  

Posted by Dr.Ken at 17:55Comments(0)形成外科エピソード

2010年11月15日

◆マイクロの世界

は別世界です。

 マイクロサージャリーまたは微小血管外科と呼ぶ技術は高解像度の手術用顕微鏡を使って血管、神経、あるいはリンパ管を繋ぐ手技ですが、顕微鏡下のマイクロの世界は、肉眼の世界とは全く別の視野が拡がります。

 本日も県立医療センターで、この手技を応用して乳房再建を行いました。下腹部の皮膚と脂肪を栄養する血管(動・静脈)を切り離して胸の血管につなぎ血流を再開させて組織を移植したわけです。

 使用した手術用顕微鏡は2004年に、私が旧県立那覇病院に勤務中に導入した物です。
写真が実物。

 当時、日本に数台しかなかった高性能の顕微鏡です。手術が楽しくなるほど使いやすく、術野が明るく、くっきり見え、1ミリ以下の血管でもストレスなく吻合できました。


実際に使っているところ。


 写真は小児の指の血管を繋いだときに撮った顕微鏡下の写真です。

画面に物差しを置いて撮影していますが一目盛り1ミリです。細い糸で繋いであるのは、指の動脈と神経です。何れも1ミリかあるいはそれ以下の太さであるころが分かります。ちなみに使った糸は11-0ナイロンで、太さは0.01ミリです。
 
  

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2010年10月02日

◆手術用ルーペ2

については以前のブログでも紹介しました。
 
 現在使用中のものは、10年前に視力、瞳孔間距離、手術中の姿勢にも配慮して作られたオーダーメイドの拡大鏡です。先日、片側のルーペ本体とそれがはめ込まれたガラスごと、突然脱落、落下しました。見るとフレームを固定する特殊なネジが取れたのが原因と分かりました。10年に渡り私の身体の一部となって働いてくれたわけで、あちらこちらにガタがきてもおかしくはありません。応急処置でなんとか使えるようにはしましたが、ルーペやガラスの向きが微妙にずれると使い物になりません。初代のルーペも健在ですが、今使っている2代目ほど使い勝手は良くありません。
 
 2代目が使えなくなると業務に大きな支障がでますので、危機管理の意味もあって、先日新しい3代目のルーペを購入しました。現在の目の状態に合わせて、これまでより倍率の高いものを注文しました。3代目は主に眼瞼の手術に使用していますが、より明るく鮮明な視野で楽しく仕事ができます。

初代(フレーム部分を変えたので新しく見えます。)


2代目、メッキがはげかかっています。診療中は身体の一部です。


3代目、とにかくよく見えます。



ルーペを使いこなせる限り外科医として働けます。  

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2010年09月11日

◆へそ(2)

のない、お腹を想像できますか?
 
次の写真はお腹の手術の際にへそを取られたため、へそを再建するために紹介されてきた方です。
カエルのお腹はまだしも、ヒトのお腹にへそがないとやはり違和感を覚えます。

 生まれつきへそのないヒトはいませんから、欠損の原因はほとんどの場合何らかの手術あるいはヤケドなどのけがです。


 へその名残がまったくない状態から、見た目が自然なへそを作ることは、実はかなり難易度の高い手術になります。キズ跡をできるだけ表面に出さずに、充分に深い、かつ、できれば昨日のブログで紹介した多くの人が好む形にとなると・・・。

 幸運にも(?)、今年になって術後にへそを失った方を2名手術しました。

 実際には、まったくキズのないお腹のへその作り方で、万人が認める良い方法はありません。そのため、手術を計画するに当たり、ありとあらゆる文献を検索しました。写真を見て、これならいけそうという方法をやっと見つけました。

 
これがそのデザインです。

詳細は省きますが、術中に工夫しながら、なんとか納得のいく形にできました。

写真は術後1ヶ月です。


 もちろん、術後に患者さんが「I'm happy.」と言って初めて、私の仕事は完結します。  

Posted by Dr.Ken at 12:00Comments(0)形成外科エピソード

2010年09月10日

◆へそ

の形は、千差万別ですが、理想の形とはどんな「へそ」でしょうか。

 形成外科・美容外科領域で世界的に最も権威のある雑誌PRS(以前の記事を参照下さい)に「The Ideal Female Umbilicus ? (PRS,121: 356e, 2008)」と題した論文があります。5種類のへその写真をみせて、合計251名の一般人男女に、好みのへそを選んでもらい、その結果を検討、報告したものです。

次の写真が、5つの代表的なへその形です。
日本人のへそに当てはめても大きな差はないと思います。
さて、皆さんはどのへそが好みですか。はてな


結果です。

 一番人気は、男女問わずたまご形+フード付、二番目以降は男女の好みの差が明らかです。女性の2番は縦形+フード付、3番は横形、男性の2番は横形、3番はたまご形でした。論文の中でその理由については触れていませんが、へそを作るときは男女の好みの差を考慮すべきとしています。

 次回は、へその再建について紹介します。ニコニコ  

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2010年08月07日

◆ケロイドと肥厚性瘢痕(3)

について、昨日の続きです。

 左足の肥厚性瘢痕を痒みを抑える内服薬に加えて、シリコンシートと包帯圧迫による治療を開始しました。

その2ヶ月後です。



4ヶ月後です。



12ヶ月後です。母親の献身的なケアもあり肥厚性瘢痕は、かなり扁平化しましたが一番ツッパリが強いところが線状に残りました。



そこで保存的治療も限界と判断し、手術を検討しました。ツッパリ(瘢痕拘縮)を治療するのに形成外科で最もよく用いるのがZ形成術です。皮膚をジグザグに切開して縫い直します。
 手術前のデザインと縫合直後の状態です。理論上は線状のツッパリ部分の皮膚を1.7倍に延長する効果があります。




Z形成術後7ヶ月目の状態です。ツッパリはほぼ消失し、肥厚性瘢痕もほとんどなくなりました。皮膚の色調も時間とともにさらに改善していくものと思います。



 このように適切な治療計画と、本人と家族の丁寧で根気強いケアで最良の結果に導くことができました。  

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2010年08月06日

◆ケロイドと肥厚性瘢痕(2)

については、以前のブログの中で、両者の違いと、それぞれの標準的な治療方法について、詳しく紹介しましたので、まず、ご覧下さい。ここでは主に肥厚性瘢痕の治療について追加します。

 肥厚性瘢痕に機能障害伴う場合、たとえば関節周囲だとツッパリ(専門的には瘢痕拘縮「はんこんこうしゅく」と言います)のために十分関節が曲げられなかったり、伸ばせなかったりすると日常生活にも支障を来します。

 このように瘢痕拘縮を伴う場合は、手術を考慮しながら治療計画を立てます。手術もできるだけ身体への負担が少なく、最大限の効果的が得られる方法を選択するのは当然のことです。そのためには、いきなり手術ではなくて、まずテーピングや圧迫固定、内服薬を組み合わせてできるだけ障害の程度を軽減させて、最終的に残った問題を外科的に治療した方がうまくいきます。

ヤケドで左足に肥厚性瘢痕を生じた男児です。
キズが赤く盛り上がり、硬く、足関節の動きも制限があり、痒みも強いためしきりにキズをひっかいていました。



このままでは、ひっかくことでさらにキズが盛り上がり、ツッパリも悪化して関節の運動制限がひどくなります。幸いヤケドを負ってから間もないので、肥厚性瘢痕とはいっても圧迫を継続することで、ある程度扁平化することが期待できます。
そこで痒みを抑える内服薬とシリコンシートと包帯による圧迫を開始しました。



 長いブログになりました。続きは明日紹介します。  

Posted by Dr.Ken at 21:39Comments(0)形成外科エピソード

2010年03月08日

◆ケロイド

については、以前のブログでも触れましたが、形成外科で最も権威のある学術雑誌であるPlastic and Reconstructive Surgery(通称PRS1月17日ブログ参照)の最新号で、現時点でのケロイド対するベストの治療法が紹介されました。著者は日本の形成外科医ですが、数多くの治療経験に基づいた結果で説得力のある内容でした。

 大筋では、これまでの治療法と変わりませんが、具体的な指針を示している点が評価できます。まず、ケロイドの大きさと個数で外科的に完全に切り取るのか、否かの方針を立てます。つまり、ケロイドをなくすことを目標とするのか、あるいは改善ないし増悪阻止を目標とするのか、最初に治療目標を決めるわけです。

 ケロイドを切り取った後は、いかに再発予防策を講じるか重要です。
 具体的には以下の通りで、何れも徹底して行う必要があります。経験的に、最低1年は経過を見ないと再発の有無を判断できません。
術後に電子線照射またはステロイドを局注する
抗アレルギー薬(トラニラスト)を内服する
キズをテーピングまたはシリコンシートでカバー(外的刺激の予防)する
キズへ緊張がかからないようにする


背中のケロイド


完全に切り取って、電子線を照射しました。術後5ヶ月の状態で、良好に経過していますが、まだまだ油断はできません。
  

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2010年02月21日

◆借金生活(4)

の続きです。

 昨日、上眼瞼のできもので来院された方がいました。診察室に入るなり、同伴のお孫さんの手術を、私が7年前に行ったと話してくれました。手術したのは2歳の時なので、お孫さんご本人も記憶はありません。私は、名前に聞き覚えがありました。行った手術は、ヤケドによる小指のツッパリ(指がほとんど伸びない状態)に対して、足うらの皮膚を移植したのです。最後の診察から6年経っていましたが、移植跡がほとんど分からないくらいに綺麗でした。おまけに指紋も他の指と同じように見えるのが不思議です。皮膚移植も形成外科が最もよく使う手術方法(=借金の返済方法)です。

ヤケドのキズ跡で指がほとんど伸びない状態(瘢痕拘縮)です。


瘢痕を切り取り、指を伸ばすといかに皮膚が不足しているかがよく分かります。


手術後7年、移植跡がほとんどわかりません。この手術のポイントは、日焼けしない皮膚の欠損を、同じ性質の足うらの皮膚で被うことです。


足うらの中央から皮膚を採ります。


7年後の足うら、わずかにキズ跡が見えますが、症状はなく歩行するにも問題はありません。
  

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2010年02月20日

◆借金生活(3)

の続きです。

 先日、巻き爪のご相談で来られた方がいました。診察室に入るなり4年前に、私が眼の手術をしたと話してくれました。
 
 残念ながら、お顔は記憶しているものの詳細を思い出せません。てっきり眼瞼下垂の手術をしたと思い、上まぶたを診察すると手術したのは下眼瞼と言います。キズ跡もほとんど分からないので、診断は何だったかと聞いても覚えていないとのことでした。

 そのため、4年前の写真を調べたところ、皮膚がんの手術をしていたことが分かりました。

下眼瞼の皮膚がん切除後の再建
丸く囲んだ腫瘍の部分を切り取ります。その後、内側、外側の皮膚を寄せて組織欠損を閉じるようにデザインしています。


目尻の皮膚をZ字状にデザインするのがポイントです。そうすることで、効率的に組織を移動できると同時にキズ跡も目立ちにくくなります。


縫合直後


皮膚がんを切除した後の組織欠損=『借金』を周囲の組織をうまくやりくりして、負担を最小限にキチッと再建=『返済』できています。
  

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2010年02月18日

◆借金生活(2)

に慣れた外科医は、形成外科医だと2月1日のブログで紹介しました。

 表現を変えれば、形成外科医は借金を返済するのが得意な外科医で、中でも返済のための資金を抵利子で借りて、それを上手に早く返済できるのが優秀な形成外科医と言うことができます。

 今日は、具体的にどのように組織欠損を再建しているか、つまり形成外科的、借金返済法の一部を、お教えします。

菱形皮弁によるホクロ切除後の再建
比較的大きなホクロなので、切り取ったあとを、直接、閉じると綺麗な仕上がりになりません。


そこで、鼻根からの菱形皮弁(最もよく使う方法=返済用資金)をおこして、組織欠損部を被い、皮弁を採った部位は、そのまま縫合しました。術前デザインで大事なことは、最終的に無理なく綺麗に縫い上がるように頭側から皮弁を移動することです。


縫合直後


1年後、計画どおり綺麗に仕上がりました(=予定通りに返済が完了しています)。


双葉皮弁による皮膚がん切除後の再建
双葉皮弁は、文字通り二枚の皮弁からなり、組織欠損部分を再建するのに使った皮弁の採取部(2次欠損部分)をさらに別の小さな皮弁で被う方法です。
写真の丸く囲んだ部分が組織欠損部になります。
お金の返済方法でいうと、利子は高くても、すぐに手配してくれる銀行からの資金で、まず借金を返済して、あとでより利子の低い銀行に借り換えるやりかたです。


縫合直後


術後7ヶ月、綺麗に仕上がっています(=無理なく返済が完了しています)。
  

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2010年02月01日

◆借金生活

に慣れた外科医と言えば間違いなく形成外科医です。

 形成外科とは、別名、形成再建外科とも呼ばれるように、ケガやできもので失われた身体の一部分をできるだけ元の状態に戻すこと、つまり再建することが、形成外科医の大きな役目です。身体の欠損部分を、借金にたとえると、その返済または穴埋め(再建)をどのように行うか、毎日のように頭を悩ましているのです。

 借金の返済にも、低金利の分割払いや一括返済などいろいろな方法があるように、再建にも多くの方法があります。どれを選択するか、大切なポイントは日々の家計に大きな負担が来ないように、再建で言えば身体に大きな負担が来ないように計画を立てることです。

 多額の借金でなければ、家の中のへそくりや小銭をかき集めて何とか返済できる場合もあるでしょう。手術で言えば、周囲の組織を引っ張り寄せて、皮膚の欠けた部分を閉じる方法がそれに当たります。

 また、車や家などの大きな買い物をする場合には、計画的に貯金することで、予想される借金に備えることもできます。実は、形成外科でも計画的に組織を「貯金」する場合があるのです。組織伸展器と呼ばれるシリコン製の袋を、前もって欠損が予想される部位の周辺組織の中に埋め込みます。徐々にその袋を膨らませて周囲の組織を拡張(貯金)するわけです。そして、最終的な手術で、病変部を大きく切り取ったあとに周囲の拡張(貯金)した組織で、欠けた部分を覆います。結果的に身体に大きな負担をかけず、一気に再建できてとても綺麗に仕上がります。

 形成外科医は、組織欠損(借金)のやりくりが上手でなければならないという意味がお分かり頂けたかと思います。実際の借金のやりくりもうまければ良いのですが・・・。

やけど跡のために髪の毛が部分的に欠けた状態(脱毛斑)の女の子


組織伸展器で髪の毛のある部分を拡張させた状態


脱毛斑を切り取って拡張させた頭皮で覆った直後の状態


1年後、脱毛斑はなく拡張させた頭皮から正常に毛髪が伸びた状態
  

Posted by Dr.Ken at 23:26Comments(0)形成外科エピソード

2010年01月27日

◆蚊が3匹

 というと何のたとえだと思いますか。
 小児に注射ないし処置をする前に決まって聞かれることは、「どの位痛いの?」という質問です。その時の私なりの対処法、やりとりは、こんな感じです。

Dr. Ken:「蚊に刺されたことあるでしょ?」
小児患者:「うん。」
Dr. Ken:「そのときに泣いた?」
小児患者:「いや。」
Dr. Ken:「じゃ、3匹の蚊に同時に刺されたことはある?」
小児患者:「いや。」
Dr. Ken:「注射は3匹の蚊に同時に刺されるのと同じぐらいだから大丈夫ね?」
小児患者:「・・・」(半分納得、半分疑いの表情)


「蚊が3匹」と言われても、私自身もどの位の痛みなのかピンときませんが、「痛いけど何とかなりそう」と、何となく思わせるには、良いたとえだと思っています。実際、このフレーズを使いだしてから、注射ないし処置にうまく誘導できる確率は、明らかに高くなりました。

 ところで、あのとても痛い局所麻酔の注射は、誰もが経験したことがあると思います。針を刺されるとき、麻酔薬が身体に入っていく時、特に痛みを感じます。実は、局所麻酔注射の痛みを少なくするための工夫が数多く報告されています。私自身、毎日、多くの患者さんに痛い思いをさせていますが、痛みをゼロにはできないものの、これまでの研究に学びながら、できるだけ痛みが少なくなるよう心がけています。
 
 具体的には、以下の通りです。
冷蔵庫から出したばかりの液は使わない、できれば人肌に近い温度の麻酔液を使用する
細い針を使用する(30Gから34G)
できるだけゆっくり注射する
皮膚の比較的深い部分から注射する(専門的な表現だと真皮深部ないし直下)
大量に使用する場合は、麻酔液のpHを高めるために炭酸水素ナトリウムを混ぜる
  

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2010年01月24日

◆手術用ルーペ

 毎日の診療で、欠かせない器具のひとつが手術用ルーペです。現在使用中のものは、私の視力、瞳孔間距離、手術中の姿勢にも配慮して作られたオーダーメイドのルーペで、3.5倍に拡大して見ることができます。私自身は19年前からルーペを使用していますが、その理由は視力が落ちたからではなく、細かな手術操作が楽に行え、手術の精度が上がり、明らかに手術そのものの仕上がりが良いからです。今では、ルーペなしに美容・形成外科医としてやっていけません。倍率の高い手術用顕微鏡を使って、さらに精度を高めたいとも思っています。
 
 腎不全のために血液透析を行う準備として、腕の動脈と静脈をつなぐ『内シャント』と呼ばれる手術があります。私が外科の研修医の頃は、裸眼で直径が2~3ミリの血管を縫い合わせていました。その後、形成外科医となって、ルーペの有用性を実感していましたので、研修医の頃に内シャント術の手ほどきを受けた外科医として大先輩・師匠にあたる先生にルーペの利用を勧めました。ところが、その先生からの返事は、「俺はルーペを使うほど、眼は衰えていない」でした。「ルーペを使わなくても手術ができるのは分かっていますが、いかに手術の精度を上げるか、質の高い仕上がりにするかが問題なのです」と反論したかったのですが、誇り高き外科医は、その後ルーペ下手術の醍醐味を知ることなく、管理者になってしまいました。

ルーペ着用中の姿
  

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2010年01月22日

◆『形成外科手術の十戒』解説4

 78歳、女性、左下眼瞼脂腺癌
 眼瞼脂腺癌は、悪性度の高い腫瘍のため、外科的に治療すると切除後に下眼瞼全体の欠損を生じます。上下眼瞼は、表側から皮膚、眼輪筋、瞼板(軟骨)さらに結膜という層構造になっています。眼瞼は、目の開け閉め、眼球保護の面からとても大切な部分ですので、眼瞼のすべての層が欠損した場合に、もとの層構造を再建することは、とても重要です。この方には、結膜側を支持性のある硬口蓋粘膜(口の中の天井部分にある比較的硬い粘膜)で、皮膚側を頬部回転皮弁(こめかみから耳の前、さらには首の部分に及ぶ切開を加え、皮膚を少しずつずらして移動させる方法)で再建して良い結果が得られました。

線で切り取る範囲を示しています。


結膜側を硬口蓋粘膜で再建しているところです。


再建後、1年再発もなく、目の開け閉めも問題ありません。



この症例から学んだ十戒は以下の点です。

十戒その6:欠損は似た組織でおぎなえ、余裕をもって組織を確保する

けがやできものを切除したあとの欠損部分は、できるだけ似た組織でおぎなうとよい結果が得られます。多くの場合、再建材料は隣接した部分の組織になりますが、局所皮弁が優れているのはそのためです。しかし、必ずしも隣りにこだわる必要はありません。性状の似た組織を全身くまなく探し求め、微小血管外科(microsurgery)を応用することで、どの部位の組織でも、多部位へ移植することが可能となりました。
  

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2010年01月20日

◆眼瞼下垂と高血圧

 眼瞼下垂については、数年前からマスコミで盛んに取り上げられていたので、ご存じの方も多いかと思います。近年の研究で、眼瞼下垂と様々な身体症状、疾患との関係が明らかになり、そのことが報道されて、一躍注目を浴びるようになりました。また、画期的な治療法も開発され、安定した良好な手術成績が得られるようになり、多くの方が形成外科や眼科で治療を受けています。

 眼瞼下垂から派生する様々な症状、疾患は、主に自律神経の1つである交感神経の過緊張状態が引き起こす病態で、次のような症状が挙げられています。

記憶力の低下、イライラの継続、怒りやすい(キレやすい)、低体温、視力低下、視野狭窄、流涙、ドライアイ、眼痛、頭痛、高血圧、白髪、脱毛、肩こり、冷え性、不眠、めまい、鼻づまり、聴覚過敏、耳鳴り、突発性難聴、喘息、便秘、下痢、尿失禁、緑内障、網膜中心動脈閉塞、網膜静脈閉塞、下腿静脈瘤、皮膚の白斑、下腿浮腫、痔、狭心症、糖尿病、腰痛、歩行障害、眼瞼痙攣、腰を曲げて歩く、嗅覚低下、うつなど。


 それにしても、多彩な症状ですね。
 先日、85歳の女性の方が、まぶたの垂れ下がりを訴えて来院されました。明らかな眼瞼下垂で、視野がかなり障害され、見るからに辛そうです。家族の方を含めて、診察結果と手術の方法を説明して、早速手術を予定しました。ところが高血圧で通院中の内科の主治医からは、年なのだから今さら手術はやめなさいと言われたようです。手術当日、主治医には内緒で手術を受けることを決意して来院されました。私は、全身状態が良好なことと本人の強い意志を尊重して、予定通りに手術を行いました。手術も問題なく終え、術後1ヶ月の定期外来で受診された際に、数日前に内科を受診したが手術を受けたことを報告しなかったこと、高血圧の治療薬が減らされたことを話してくれました。眼瞼下垂をなおすことで交感神経の過緊張状態が改善し、上記の症状・疾患も良くなる可能性があります。ただ、あえて手術前に、そのことはお話ししません。手術の目的は、あくまで視野障害や目の疲れなど、眼瞼下垂からくる目の症状を改善することだからです。ご本人は良い結果にとても満足されていましたが、さらに眼瞼下垂が改善したことで血圧も良くなった可能性があることをお話しすると、頑張った自分へのご褒美だとさらに喜んで帰られました。

原因、症状、治療法などは、下記に紹介したページを参照下さい。
私の友人である手塚医師が勤務する松山市民病院形成外科のページ

日本形成外科学会のページ

私が2008年6月に沖縄タイムスに掲載した記事
  

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2010年01月15日

◆『形成外科手術の十戒』解説3

 55歳、男性、右手不全切断。
 電動ノコギリで作業中に右手の不全切断を受傷。親指を除き、他の4本の指は骨、血管、神経、腱がほとんど切断され、辛うじて原形をとどめている状態でした。手の機能(働き)をできるだけ残すために比較的、指の組織が残っていた中指を人差し指の部分に移動させることにしました。骨、血管、神経、腱をつなぎ、手術は成功しました。残った指は2本ですが、コップを握ったり、軽いものはつまんだりできるまで回復しました。

手術前(元写真を処理しています)


手術直後(元写真を処理しています)


手術後1年



 この症例から学んだ十戒は以下の点です。
十戒その4:現存する組織をもとの位置にもどせ、使える組織を見極める
顔に大きな外傷を受けたとします。目・鼻・口も原形をとどめない程、損傷されいて、どこから手を着けていいかわからない。こういう時は、たとえ損傷が著しくても組織を捨てずに、ジグソーパズルと同様に残っている部分を丹念に元の位置へ戻してみます。そうしますと、足りない部分の輪郭がはっきりしてきます。実際の手術では、このステップに十分時間をかけ、問題点(組織が欠けた範囲)を正確に把握することが大切です。

十戒その5:そして生じた欠損をまず処置せよ、今できることは何か
明確になった欠損範囲の修復をまず行います。この再建のための組織移動で生じた欠損はその次に処置します。この2つを一緒に行うと問題が混乱してくるからです。  

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2009年12月21日

◆ケロイドと肥厚性瘢痕

 一般的には、ケガや手術後のキズ跡が赤く盛り上がった状態を、すべて『ケロイド』と呼んでいるように思いますが、医学的には、キズ跡の線維成分が過剰に増殖した状態で、ケロイドまたは肥厚性瘢痕と区別して呼びます。両者の区別は、治療法を決める上で大切ですが、実際はきっちり線引きできない場合も少なくありません。両者の特徴を簡単に言うと、ケロイドは盛り上がりや硬さ、赤みなどが何年も持続し、元々のキズの範囲を越えて大きくなりますが、肥厚性瘢痕は、多くの場合時間とともに落ち着き、元々のキズの範囲を越えて大きくなることはありません。
ケロイドと肥厚性瘢痕の詳しい解説は日本形成外科学会のホームページもご覧下さい。

下の写真(クリックすると大きくなります)は、心臓手術の5年後のキズです。大きく赤く盛り上がっていますが、元々のキズの範囲を越えていないので、肥厚性瘢痕と診断しました。


下の写真(クリックすると大きくなります)は、ニキビ跡のキズです。元々のキズの範囲を越えて、大きく赤く盛り上がり、何年も持続し拡大しつつあるので、ケロイドと診断しました。


ケロイドと肥厚性瘢痕の治療(日本形成外科学会のホームページより一部抜粋)
保存的治療と手術的治療に分けられます。
保存的治療としては、以下の方法があります。
A.外用療法
 ステロイド剤の入ったテープや、ステロイド剤軟膏を使用します。
 保湿を目的として、水分不透過性絆創膏を貼ります。
B.局所注射療法
 ステロイド剤をケロイドに直接注射する方法です。
C.内服療法
 抗アレルギー剤は、かゆみなどの症状には効果が認められることがあります。
D.圧迫療法
 患部の安静を保ち圧迫する方法があります。テープ固定やシリコンシートによる圧迫などが行われます。
E.放射線療法
 手術後早期からの電子線照射が有効とされます。

ケロイドと肥厚性瘢痕の治療は、まず保存的療法が優先されます。手術を行っても保存的治療を術後早期から行う必要があります。特に、ケロイドの場合には、安易に切除すると再発し、元のケロイドより大きくなってしまうこともあり、注意が必要です。
私のこれまでの経験から、耳のピアス後のケロイドや、かゆみや痛みの強い肥厚性瘢痕は術後にしっかりと前述の保存的治療、特に電子線照射を併用することを条件に、外科的治療も有効と考えています。
下の写真(クリックすると大きくなります)は、心臓手術の3年後のキズです。肥厚性瘢痕と診断しました。


切除と術後電子線照射の併用治療後2年の状態です。再発していません。


下の写真(クリックすると大きくなります)は、ピアス後のケロイドです。


切除と術後電子線照射の併用治療後1年の状態です。再発していません。
  

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2009年12月19日

◆『形成外科手術の十戒』解説2

 3歳、女児、先天性巨大色素性母斑(生まれつきの大きなアザ)
 出生時より体幹と下肢を中心に広範囲の黒いアザを認めました。本疾患は、整容の面からはもちろん、また悪性化の率が高いため早期の治療が必要です。黒いアザの部分を切除して人工真皮を移植し、その2〜3週間後に頭部の皮膚を移植する手術を繰り返し行いました。多数回の手術が必要になりますが、その理由は病変自体が広範囲なのはもちろんのこと、移植する皮膚を頭皮からのみ採取しているからです。治療の経過中に、アザが広い範囲に存在していた右下肢が左下肢に比して極端に細いことに気づきました。手術の影響かと思いましたが、そうではありませんでした。原因は不明ですが、最初に撮影した写真でも、明らかな左右差の存在を確認できたのです。
(写真はサムネイルで表示します、拡大したい場合は写真をクリックして下さい。)
術後


術前


 この症例から学んだ十戒は以下の点です。
 十戒その3:記録は正確に、そしてこだわりの写真を撮る
身体外表の形態回復、改善が主な仕事である形成外科にとって、術前・術中・術後の画像記録は何にもまして重要です。患者さんへの術前・術後の説明は、もちろん、術前検討会や学会報告でも写真無しでは、どんなに多くの時間と言葉を要しても、相手に正確に、こちらの意図を伝えることはできません。また、写真で経過を振り返ることで、以前には気づかなかった問題点が見えてくることがありますし、いいアイデアが思い浮かぶこともあります。その意味で、こだわりを持って良い写真を撮ること、つまり、適切な背景のもと、撮影範囲、撮影角度や露出を含めて可能な限り一定の条件で撮ることが大切です。良い写真が撮れることは、良い形成外科医となるための条件と言っても過言ではありません。  

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