のひとつが
痔瘻(じろう)に伴うものです。
太ももの付け根にできたしこりで来院された方がいました。
紅く腫れて痛みがあり、そのうちに膿が出て来たために他院を受診して当院に紹介されたのです。
私が最初に見たときには、抗生物質の内服も始まっていて、腫れもひき赤みや痛みもとれていました。
経過から粉瘤(詳しくは
こちら)が化膿したものと考え経過を見ていくこととしました。
ところが数週間経過をみても良くならないため、痔瘻の存在を疑いました。
診察すると膿が出ている穴(瘻孔)から肛門に向かって伸びる硬い組織を皮膚の奥に触れました。
根っこ(原因)が、実は肛門にあり、その部分の化膿(炎症)が周囲の筋肉や皮膚を貫いて拡がり皮膚直下にしこりをつくっていたのです(痔瘻)。
このような痔瘻の広がり方には、一定の方向があって
外科では上図のように
Goodsallの法則と呼ばれています。
私が医学生の頃の外科の教科書(下図)
にも載っています。
痔瘻の治療は存在部位と広がり方に応じて異なりますが、基本は根っこの病変と瘻孔をきちんと取り切ることです。
太物の付け根やお尻周囲のしこり、できものを診察するときはいつも痔瘻との関連を頭に入れておく必要があります。
追記:写真の患者さんは、その後、紹介先の肛門科で手術を受け治癒したとの連絡を受けました。